単純にコードをかき鳴らす。ヘビーゲージが切れてしまうほどに思いを込めて兎にも角にもかき鳴らす。案外こういうのにも人は心打たれる場合がありますが、ずっと同じ調子だと「うっさいねん」と突っ込まれることも多々あるわけで、ものには加減というか「調子」と言うのがあります。強く弾くべきは強く弾き、弱い所は弱く。
変化が興味を惹く
初心者は他に気を取られていることが多く、抑揚というか盛り上がり盛り下がりを作れないという場合があります。
例えば森の中に迷彩服を着て立っているだけ。微動だにせず立っているだけで案外周りに溶け込んで見えなくなってしまいます。逆に少しでも動けば迷彩服を着ていようが気がつくわけです。人の注意は案外こういった「動」の部分に惹かれるもので、少しの音楽的な工夫が「あれ?うまいんじゃないの?」って言う錯覚を覚えるのです。
両手を総動員
コード進行があまりにも奇抜で、音楽的には高度なことをしているのですが演奏が平坦だとただの下手くそになってしまうことがあります。コードを鳴らすだけ、楽譜通りに弾くだけそれだけでは足りないこともあるわけです。
まずは、コードにベース音の流れを付け加えてみる。コードを弾きながらメロディーも付け加えてみる。そういったことをするためには敢えてコードを崩さないといけない場合もあります。あらゆるポジションで利用できるものは利用しつつ、かつ弾く方の手も部分的に鳴らせるように練習しなくてはなりません。
実際、コードはある程度で覚えていきますがそれを弾く方の手は十分な練習をしないとダメな場合も多く、ごく簡単なテクニックであればそこまでではないにしろ、高度なテクニックになってくると弾く方の手が追いつかないことも多々あります。
例えばEmを繰り返してスリーフィンガーしてみるとします。practiceのスリーフィンガー7番あたりのパターンが都合よいかもしれません。
古のフォークソングなどにはよくあったテクニックのハンマーリングオン。もちろん今でも使用されてますが、何でもかんでも使用するという感じでは無くなってきているように思います。
うちの回りではハードロックなどではこれとプリングオフをなくして速弾きできるかっ!なんて言われた事もあります。
つまり何が言いたいかというと、ハンマーリングとプリングオフは最近のストローク主流の音楽ではあまり使用されなくなりましたが、実は大変重要なテクニックであって、これができるかどうか、もしくは上手く使えるかどうかが上手く聞かせるための基本といっても良いかもしれないということなのです。
さて少し話がそれましたが、まずハンマーリングとは基本的なテクニックで解説したように、「ピッキングせずに左手の指で強く押弦して音を出す方法。ピッキング後に弦を左手で押す事によって鳴る方法もある」なんてのが基本ですが、実際弾き語りにおいては後者の場合が多く、前者はどちらかと言うとエレキなどでメロディを弾くような場合でしょうか。
エレキギターの場合、アコースティックギターよりも音を拾うために、ピッキングせずともハンマーリングだけで音はきちんと鳴るわけですが、アコギの場合は鳴るには鳴っても大きな音を出すのはちと難しいわけです。そういうことから弾き語りと言うシチュエーションで見た場合にはピッキングなしのハンマーリングはあまり多用しないと思います。
そこで、まず開放弦とハンマーリングによる効果をよりわかってもらうために、サンプルで鳴らしているようにEmで練習してみようと思います。ただ、ボヨーン、ボヨーンと鳴らしているだけでは面白くないので、practiceのスリーフィンガー7番あたりのパターンを利用してもう少し実践的にやってみたいと思います。
まず、Emをpracticeのスリーフィンガー7番で弾けるようになる所までは各自練習をしておいて下さい。この時、コードチェンジはする必要は無く、ずっとEmでOK。
ベース音は6弦開放のEで後はなんとなくスリーフィンガー7番っぽい感じでやってもらえれば良いです。ここがクリアできたら次に読み進めてみて下さい。
ハンマーリングを覚えてみる
ハンマーリングや、プリングオフがなんだか上手く聞こえるのは、音が滑らかに繋がると言う事に1つ意味があるのではないかと思います。
本来Emを押さえているだけだと、6弦からミ、シ、ミ、ソ、シ、ミが鳴っているだけに過ぎません。しかし、ここにハンマーリングを加えると、5弦シはその開放弦の音のラからシへと、4弦は同じくしてレからミへと音が繋がります。
こういうのが音のバリエーションが増して何となく上手く聞こえるわけです。
さてEmの場合、すでに前述しましたが、押さえているコードの部分(つまり5弦2Fと4弦2F)で、まずハンマーリングを試してみて下さい。最初はスリーフィンガーでは無く、ハンマーリングができるかどうかを練習してみて下さい。そのためにEmを押さえた状態で、
- 中指を上げる
- 5弦開放をピッキングする
- ピッキングした音が鳴っている間に元の位置(5弦2F)にハンマーが弦を叩くように押さえる
ボヨーンと鳴りましたか?これが単発のハンマーリングです。しかし単発でハンマーリングをした所でボヨーン、ボヨーンとなっているだけでこれが上手くできているのかどうかわかりません。そこでまずこの単発のハンマーリングを連続でできるように練習して下さい。
連続でできるようになったら、今度は4弦2Fでも同じ事を練習してみます。これが単発でできるようになってくると次に、5弦2Fでのハンマーリング、4弦2Fのハンマーリングを連続でできるようにしてみます。5弦2F、4弦2F、5弦2F、4弦2F・・・とハンマーリングを繰り返すわけです。これだけでもなんだか上手く聞こえてくるのではないでしょうか?
また同じ指で例えば中指だけ、薬指だけと練習してもいいですし、通常は5弦2Fは中指、4弦2Fは薬指でやります。元々押さえてるのはEmなので。
ただ本来と逆に練習するのはベース音を弾くコード、つまり分数コードやオンコード((例えば、C/BとかGonBみたいなコード))と呼ばれるものにも対応できるようにするためです。
EmやAmの様なコードは開放弦+任意のフレット(もしくはコードを押さえている所)でハンマーリングをするわけですが、何もハンマーリングは開放弦+なにがしかなだけではないのです。
例えば、開放弦を使わないハンマーリングもあります。6弦5フレットから7フレットへのハンマーリングであれば、
- まず5フレットを鳴らす。
- 次にその音が鳴っている間に7フレットを押さえる。
これもハンマーリングです。押さえた時に音が途切れてはハンマーリングになりません。ボヨーンと鳴って初めてハンマーリングなのです。
開放弦を使わずともハンマーリングができると言う事は、開放弦を使ってもできると逆にも言えます。これまでは2つの音でハンマーリングをしてきたわけですが、例えば5弦開放弦→5弦3フレット→5弦5フレットのようにハンマーリングで3つの音を繋げる事もできるわけです。開放弦の後、5弦2フレットを追加したのであればラシドレと音がハンマーリングされてます。
このようにして開放弦+ハンマーリングを行う事で、開放弦+ドレミができたりもします。本来ならピッキングをして鳴らす所を省略する事もできるのですが、ピッキングというのは非常に重要で、ピッキングできない内はついハンマーリングやプリングオフに頼ってしまう傾向があります。これは是非避けたい。できるならピッキングができるように練習する事を主体にして、効果としてハンマーリング等を使ってみて下さい。
ハンマーリングからプリングオフへと連続で鳴らす方法を覚えてみる
さて、ここまでできるようになったら同じくして、プリングオフを覚えてみます。今度は押さえた弦を引っかくようにして放します。
原理は、弦を押さえている状態でピッキングして音が鳴っている間に指で弦を引っかくようにして離します。ただ、指を離すだけだと音が出ないので少し引っかくわけです。
しかし今回行うのは、ピッキングしないでやるやり方でハンマーリングをした時に鳴る音を利用してプリングします。5弦2Fで行っているなら、開放音のラ→シ→ラと鳴るはず。4弦2Fでやっているならレ→ミ→レと鳴ります。
これを連続すると、(5弦2Fで)ラ→シ→ラ→(4弦2Fで)レ→ミ→レ、ラ→シ→ラ→レ→ミ→レ→ラ→シ→ラ→・・・と繰り返されます。
ハンマーリングだけでやったよりも音が増えてより上手くなった気分になれますね。しかし、この状態だとスリーフィンガーの練習には少しなりにくいわけです。そこでこのハンマーリングからプリングへの連続は練習の冒頭に行うとして、次へ読み進めて下さい。
長渕剛の「ひざまくら」考察
コードがあったら何でもできそうと思いがちですが、その域まで達するのは少々時間がかかります。コードだけで変化に富んだ演奏をするためには、色々なテクニックという引き出しが必要なのです。
楽譜通りに弾けばそれなりには聞かせられるのですが、アクセントやタメみたいなのは案外重要で、その強弱が気持ちを込められる手段にもなります。そして必要のない音を鳴らさないためにもミュートも時として最大のテクニックになります。
こういった前置きを踏まえてちょっと解説してみたいと思います。曲を知らない人は以下の動画を。
これはまだ長渕剛が、長渕ではなくツヨシと呼ばれていた頃の音源だろうかと思います(Youtubeはナマモノですのでお早めに)。曲自体はいわゆるフォークソングなんですが、ちょっと面白いイントロでせっかくハンマーリングやらの解説をしたのでこのあたりを紹介してみたいのです。
ちなみにcapo2でAmのキー。まず楽譜を見て理解して欲しいのは、最初のコードのG。ここでいきなりのハンマーリングなんですが、実はGではなく押さえてる所はEmである事に気がつけたらとても素晴らしい。いやキーはGなんだろうけれども弾き方としてですが。
TAB[FIX]を見てわかるように、5弦、4弦の開放からEmでハンマーリング、続いてAmでハンマーリングで最終的にAmに行くのが1小節目。Amでハンマーリングと言いながらEmの形のままそれぞれの下の弦に移動してハンマーリングしているわけで、気持ちはAmだけれど、押さえ方としてはEmのフォームで移動していると考える方がわかりやすいかも。
最終的にはAmにまず落ち着くわけですが、余裕があればAmを鳴らしている間に、2オクターブ高いド・ミ(2弦15フレット、1弦14フレット)あたりを混ぜ込んでも良いです。鳴らしている間にと言いながら、もちろん12フレットあたりまで指が届くはずもないので良い所で素早く鳴らすわけです。
そして今度は最大の難関であるFのプリングオフ。しかも小指あたりでオクターブ高いレ(2弦3フレット)からド(同弦1フレット)を鳴らすのですが、何が難しいと言っても6弦1フレットも押さえておく必要がある所。こういった時、Fを押さえようとするとムリが出まくってしまいます。そのため指のフォームはFっぽい感じになるはずですが、Fを押さえる必要はなく、特にFのバレー部分で言うと、6弦1フレットと2弦1フレットを注意しておきます。そして、プリングオフの時に、2弦と6弦を同時に弾くというのもまた難しい。
感覚としては、小指(あるいは薬指)でプリングオフをして、薬指でファ(4弦3フレット)を素早く押さえる感じでしょうか。更に難しいのは、ファを押さえたと思ったらすぐさまド(2弦1フレット)をプリングオフしてシを鳴らさなくてはいけないという部分。とにかくここが難しい。
Fでイメージすると難しいのでFmaj7でイメージすると若干やりやすいかもしれません。またバレーよりも6弦1フレットは親指で押さえる方が簡単だろうと思います。
2小節目最後のGの伸ばしている間は、レ・シ(2弦14フレット、1弦12フレット)を鳴らすと完璧。
このように、単純なコードの流れでありながら、ハンマーリングとプリングオフができるだけでより上手くなったように聞かせられる・・・と言う例を出したかったわけですが、これは初心者にはちょっと難しすぎるかもしれないと思ったので、ひとまず掲載はこのままにもう少し簡単なのを探してみたいと思います。乞うご期待。