カポ。カポタストが正式名称です。これは使い方によっては大変便利な道具です。オリジナルキーがAの場合なら2フレットにカポをつけてGというコードで弾けます。これは音楽理論を少しかじれば簡単な理屈です。

victor capo よくあるバネで挟み込むタイプのカポは、弾いているうちに音が#になる可能性が高く((ずれてくる。挟んである仕組みがバネのため。))、最近画像のネジでしめていくのものに変えました。
装着も早く、ネジで絞めるため、絞める力に加減もできる上にずれにくいと思います。お勧めの一品です。
以前使用していたYAMAHAのネック側から締めていくネジ式のカポは、装着が手間だったりしたので、挟むタイプのカポを探していました。最近はネジ式にしろバネ式にしろこの手の挟むタイプのカポが多いように思います。もちろん取り付けるのが最も簡単なバネ式の挟み込むものは扱いやすいです。

victor capo 例えば、ミスチルのように2コーラスのサビが終わった後、転調するような曲はカポをつけてたら無理だろうと思われがちですが、実はスライドカポ(ROLLING カポ:上画像)というような製品があります。
これらを使えばコード進行そのままにカポの位置を素早く変更することで転調にも対応できるというわけです。

https://youtu.be/9AJozKWKI2M

上の動画はアニメこち亀のOP「葛飾ラプソディ」をローリングカポで演奏されている動画です(奏者はTOMMY/RYOさん)。1分50秒あたりから該当の部分になります。オリジナルはニコニコ動画のこちら
以下はグライダーカポのデモ演奏。この手のカポは色々な名称がありますが同じようなものです。

https://youtu.be/h2GFf6mCsz4

挟み込むようなタイプでも以下のようなものもあります。

https://youtu.be/gpyRGlasflM

原理から理解してみる

ギターはサウンドホール側に近いポジションを押さえれば音が高くなります。なので左手でコードを押さえる場合右側に行けば音程は高くなっていきます。

カポの使い方考え方

上の図fig1は、ご存知Amです。普通Amを押さえている時は、カポを0フレットに装着していると仮定して考えて下さい。そこで、fig2を見て下さい。fig2でBmとDmをよく見るとどちらもAmのコードフォームをそのままに平行移動しているというのは理解してもらえるでしょうか?
あわせてfig3とfig4を見てみて下さい。

fig3[FIX]ではフレットをひとつずらすと半音分、音が上下する事を表しています。つまりfig3の通りにカポを4フレットに装着すると、半音+半音+半音+半音で2音分音が上がった事になります(全音=半音+半音)。
どこからどこまで音が上がったかを意味するのがfig4の図を見るとより理解できると思います。

fig4[FIX]の1弦を見てみます。スタンダードチューニングをしたギターの1弦開放音はE(ミ)です。常々言う所のドレミには半音で音が上がるのと、全音移動する事で音が上がる個所があります。
ド-レ-ミファ-ソ-ラ-シドと、なっており、ミとファ、シとドは半音で音が上下します。他は全音で音が上下します。

ドレミはアルファベットでCDE…Bと対応するので、fig4の1弦は開放弦Eから1フレット目つまり半音上がった所にF(ファ)があります。以降1フレット移動するごとに半音上がって行きます。他の弦も同様に上がります。
そこでfig2を見て下さい。カポもしくはバレー(セーハー)を2フレットに装着すると、元の音から1音高くなります。これをkeyを1音上げたと言います。

アルファベットのAの次はB。AとBは全音で1音上がるためフレットで言うと2フレット分音を上げる必要があるわけです。Amをカポ0で考えるとAはラですので、BmはBのシという事からA→Bb→Bでラからシへ全音上がってるからカポ2。実に簡単な事です。

コードフォームの平行移動でコードが変えられると言う理屈を知るには、ドレミファソラシがCDEFGABと言いかえられる事と、全音と半音を知る必要があります(詳細はアルファベットとドレミあたりを読み直して下さい)。
音階にはミ←→ファ、シ←→ドのみ半音で次の音に行き、他は全部全音で音が移動します。つまり、ミ#はファの事であり、ド♭はシの事であると言うわけです。またC#とDbは同じと扱えますが実際は微妙な違いの周波数を出しているとも言われます。
他の音の間(半音階。CとDならC#やDb)には#や♭を入れます。これは全音で次の音に移動するためです。
これはギターで言うとすると、F→Gの場合バレーは1フレット→3フレットと移動します。このコードの間のF#つまり2フレットの位置を指しています。

これらから言えることは、音階の仕組み(全音や半音)はギターコードにも言えると言うことであり、カポでフレットすべてを押さえるということは移動したフレット分、スタンダードチューニングの各開放弦の音が上がるということになるわけです。

同様にfig2[FIX]のDmを見て下さい。AmからDmまでどれぐらい音が離れているかを見てみましょう。

フレット対応表[Am~Dmまで]
Am A#m Bm Cm C#m Dm
フレット 0 1 2 3 4 5

Amが0フレットと言うことから、対応する数字をAm=0として、Dmまで半音刻みに数字を振ったのが図のフレット対応表[Am~Dmまで]です。

この表からわかるように半音刻みでAmからDmまでどれだけ移動するかと言うと、半音が5つ分移動したのがわかります。
ギターの1フレットは半音にあたるので、半音5つ分つまり5フレットの位置にカポなりバレー(セーハー)を作ってAmのコードフォームを押さえればDmになると言う事です。

結果としてこういうことが言えます。

  • カポは1~6弦を装着したフレット×半音分、音の高さを変えることができる

ということです。

重要なのはカポをつけていない状態の時は、カポを0フレットにつけていると仮定する事です
5フレットにカポを付けたとすると半音で5つ分、音(2音半)が高くなったということになります。2フレットなら半音+半音で全音(1音分)音が高くなったということです。

ここで必ず覚えておく必要があるのはドレミファソラシドの構造。

  • ミとファ、シとドは半音で音が移動。
  • 他は全音で音が移動する。

これを理解していないと間違った認識となってしまいます。

コードのルートとコードタイプから目的のコードを探す

コードのベースとなる音(ルート) 1カポ 2カポ 3カポ 4カポ 5カポ
C B A#(Bb) A G#(Ab) G
C#(Bb) C B A#(Bb) A G#(Ab)
D C#(Bb) C B A#(Bb) A
D#(Eb) D C#(Bb) C B A#(Bb)
E D#(Eb) D C#(Bb) C B
F E D#(Eb) D C#(Bb) C
F#(Gb) F E D#(Eb) D C#(Bb)
G G#(Ab) F E D#(Eb) D
G#(Ab) A F#(Gb) F E D#(Eb)
A A#(Bb) G F#(Gb) F E
A#(Bb) B G#(Ab) G F#(Gb) F
B C A G#(Ab) G F#(Gb)

さて上の表を見て下さい。この表はCm7やC7であったとしても対応しています((カポの列のルートとなる音(アルファベット)に「m7」や「7」をつけるだけでOK))。m7や7thコードはXmに7thが追加されています、7thコードはXと言うコードに7thが追加されていると考えます。
これらは和音は基本となる音に別の音を重ねて作られているということに通じています。

表では1カポ、2カポ…と進んでいく毎にベースになっているルート音が半音ずつ下がっていっている表になります。

カポの原理を理解するためには、そのコードのコードタイプ(マイナーやsus4など)は必要ではなく、あくまでキー(調)、ルートとなる音が重要となるいう事です。

その楽譜に出てくるすべての音が半音上がるのか下がるのか、あるいは任意の音だけ上下するかそれを考えることになります。つまりは、キーをどれだけ上下するかによってコードが変化するとも考えられます。

弾きたい曲のオリジナルキーがA→F#m→D→Eとあったとした場合

上の表で、[コードのベースとなる音]からAを見ます。そのまま右に見ていくと2カポの位置でG、4カポでFになることがわかります。

続いてF#mの場合です。

F#mはF# + mと、ベース(ルート)となる音がF#であるのでこのベース部分を2カポで鳴らすとE、4カポで鳴らせばDになります。
元々がF#mとコードタイプのm(マイナー)があるので、そのベースとなる音が変わったEやDというコードにm(マイナー[コードタイプ])をつけて、移動した分でEmやDmとするということです。

このように考えていくと、FやDmが出てくる4カポよりは2カポで弾いた方が簡単に弾けることがわかります。

また、[2カポでG→Em→C→D]と、[カポ無しでA→F#m→D→E]は同じキーである事を理解いただけるでしょうか?

前提的な知識がわかっていれば、カポ自体の説明は次の「キーの操作」の文章量ぐらいで済みます。
カポは目の前でこういうものだと説明したら前提知識を全部理解してなくてもある程度はわかるぐらいの道具です。それをウダウダと長文で説明しているのは、前提知識の方が圧倒的に深いからなのです。
その基本や基礎があってカポがその上にあると言うか、それを利用していると言うか、カポを使わずともすでにバレーで…となってしまうぐらいのものです。

キーの操作

これまでの話からカポの本領が発揮され、例えばオリジナルの曲の音が高いなと思った時にはカポの位置を調整すれば良いだけなのを理解してもらえると思います。

ギターのフレット1つは半音分なので、1フレット分低くすれば半音低くなります。

ここから、A→F#m→D→Eと言うコード進行を2カポでG→Em→C→Dと変換した後、コード進行はG→Em→C→Dのままで、2カポから1フレットにカポをつけ変えればコード進行も簡単になり、半音下げたということになるわけです。

ここ大事です。元のコード進行はA→F#m→D→Eでした。これを2フレットにカポを付けることにより、半音+半音(2フレット分)音の鳴っている弦の長さが短くなったことから音が全音分高くなります。
なので同じキーで演奏しようと思えばコードを全音分下げてG→Em→C→Dにしないと同じ音になりません。これを世間ではギターのコードを簡単にする道具だという勘違いに導いてしまっているのですが、これはあくまで同じキーのままで弾くとすればの話です。

元のキーは少し高音部が高いので半音か全音下げたいとした時に、半音なら1フレット分下げればよいわけですからA→F#m→D→Eは、G#→Fm→C#→D#と言うコード進行になります。これは案外バレーで弾くにしても握力が無くなりそうなコード進行ですが、A→F#m→D→Eというコードは、2カポでG→Em→C→Dで弾けるわけですから、1カポにしたらG#→Fm→C#→D#と同じになります。つまり半音下げられるわけですね。
もし全音分(1音分)音を下げたいのであればカポをとってG→Em→C→Dで演奏すれば良いだけなのです。

ここからもわかるようにコードがたまたまこのケースでは簡単になりましたが必ずしもそうなるとは限りません。しかし目的はキーを半音あるいは全音分下げたいということなのです。
再度確認用に書くと、カポを1フレット分ずつ上げていくと上げた分だけ開放弦(チューニングした弦)の音は高くなるので、コード自体を元のキーと同じ高さに合わせるために、上げた分だけ下げて行く事になります。この法則をまず覚えておいて下さい。

例えばC#m7と言うコードがあって、さてどこにカポをはめようかと考えた場合、2フレットにカポをはめてBm7とするだけでなく、その他のコード進行がどうなっているのかも考えるべきです

C#m7が出てくる曲ならたいていの場合、AやBm、F#m7、Dなどがコード進行中に含まれている事が多いと思います。
これは調の話になるのでさておいて、こう言ったコードが含まれる場合は4フレットにカポをつけるよりも、2フレットにカポをはめると良い事が多いのです。
AはGとなりますし、BmはAmになります。F#m7もEm7、DはCと簡単なコードで代用できるからです。

カポは利用するにおいて、できるだけ簡単なコードに代用できるポジションを選択する方が良い場合が多いです。ただし、カポを利用したから全てのコードが簡単になるとは限りません。やはりこの事からもFやBはできるだけ押さえられるようにしておく方が良いのは間違いありません
カポはFやBをなるべく簡単に押さえるための道具ではないのです

カポは、コードを簡単に弾けるようにするだけのものではなく、キーを変更することを可能とする道具です。

オリジナルキーがCである曲の場合、ちょっとキーが低いなと感じたらDにすることもできます。もちろんEでもFでもお好みでキーを変更できます。

ただし、より上手くなるためにはカポに頼らず、カポをはめていない状態で、キーを色々と変更できるようになるとより良いです。

そういった事が出来るようになると自分で曲をアレンジする際にもとても有効です。ぜひ、修得して下さい。